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Die Galerie

動輪
05型蒸気機関車の巨大な動輪
旅の途中で、例えばパリへ行くつもりで出発してウィーンへ行ってしまうような、自身でも理解し難い行き先変更−“漂泊の航跡”参照…−を平気でやらかす私だが、時には「ここへ辿り着いたらこれだけは絶対に外さない!」と意気込んで訪ねる場所もある。ニュルンベルグの鉄道博物館はそうした場所の一つだった。
ここには、私がドイツへ関心を寄せる切っ掛けとなったものが保存されている。小学生の頃に見たテレビのドキュメンタリーで、蒸気機関車の歴史を取上げたものがあった。その中で、紅い甲冑を身につけたようなドイツの05型機関車が姿を現した。当時は驚異だった時速200kmを越える速度で走ったという。北海道で“(日本)最期のSL”として活躍していたD51が、喘ぐように重そうな貨車を引き、黒い煙を吐いて走る様を見ていた私は「ドイツと言う国は、D51と同じような時代に、途轍も無いものを開発していたんだ!」と愕いていた。
蒸気機関車の最速記録は、05型の半年後、英国の機関車が破ってしまう。この機関車については、正直余り覚えていない。英国の博物館に多分誇らしげに飾られてあるのだろう…が、ドイツという国は、巨大な飛行船を飛ばして世界一周をし、世界で初めてジェット戦闘機を実戦投入した国だ。こうしたイメージと重なり、紅い機関車が強烈な印象として私の感覚の印画紙に焼き付いた。
「何時か紅い機関車の国へ!」、「何時かこの機関車を見る!」という一種の“少年の願い”が何時までも私の中に残っていた結果、ニュルンベルグに夕方着いた私は素早く宿を定めてゆっくり休み、翌朝の開館時間を見計らって鉄道博物館を訪ねた。
そうして出会った05型の動輪が写真である。2m程あった。紅い甲冑のような、1930年代に流行した流線型カヴァーに覆われた機関の産み出すエネルギーが、この巨大な動輪から鉄路に叩きつけられ、機関車の巨体は速度を上げて突進する。他の展示物を半ば無視して、この機関車を飽きもせずに眺めていた…
ニュルンベルグニ鉄道博物館があるのは、この地が日本の新橋・横浜のように、ドイツで初めて鉄道が敷かれた場所だからに他ならない…


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