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Die Galerie

遺構
リヨンに残るローマ時代の遺構
イタリア半島を北へ進んだローマ人が最初に定着したのは今日のリヨンの辺りだという。河が交差し、水運の利に恵まれ、繊維工業などで栄えたというリヨンだが、フランスでも一番旧い部類の都市ということになる。フランスで圧倒的な存在感があるパリを除けば、一番華やかな都市の一つということになるだろう。
フランスがサミットのホスト国となっていて、このリヨンで首脳会談を行った年の秋、私はイタリアのトリノからリヨンへやって来た。トリノからの交通の便がたまたま良かったということもあったが、私はローマ時代の本格的な遺構を見てみたかった。ローマ時代の劇場が、古くからの市街の奥の方、ケーブルカーで丘に上った辺りにあるというので、駅前の宿を発った私はそこを目指した。
ケーブルカーで丘へ上がったまでは良かったが、目指すローマ時代の遺構は見当たらない。20分も歩いたろうか。未だ着かない。目に付いた小さな食料品店で林檎を買って、齧りながら歩く。「オカシイ…」いい加減に見えても良い筈だ。大きなものだと聞いている。「どうなっているんだ!」と腹が立って来た…
1時間30分は歩いただろうか…漸く目指すローマ時代の劇場があった。装飾が施された石の残滓が窺えるのだが、そこは巨大な抜け殻だった。客席だった辺りにはどんな人が座っていたのだろうか…圧倒的な存在感があるこの遺構を私は小一時間、ウロウロとしながら眺めていた。横の方にローマの遺構についての博物館もあったが、その時間は閉まっていた。
歩き疲れたので、翌日夕方の移動の予定でも考えて早く休み、翌日はこの博物館にでも来ようかと考えてそこを立ち去ろうと歩き始めた。と、ケーブルカーの駅が見えた。ローマ時代の劇場跡まで、5分かかるかかからないかの場所だ。
結局私は、反対側の方へ丘の上の道を曲がりくねりながら歩いていたのだった…目指す遺構が見当たらない筈である…


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