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Die Galerie

面影
ロッテルダム
ロッテルダム港と言えば、欧州随一の港湾ということになるが、この港とともにあったロッテルダムは古くから栄えた港町だった。今日でもそうなのだが、1950年代のデザインと見受けられる駅から町へ踏み出すと、超高層という程でもないが、新しい巨大なビルが立ち並ぶ光景に出くわす。やや進むと、街の歴史を伝える旧くからの市庁舎も見られるのだが、総じて街は新しい。
ここでこの街の経過を思い起こす。第2次大戦の頃、オランダを軍門に降らせようとしたドイツは、ルフトヴァッフェ(空軍)にロッテルダムを襲わせた。空から夥しい爆弾を叩き込まれ、街が壊滅状態になった時、「次の“ロッテルダム”は何処だ!」と迫られ、オランダは降伏し、ドイツの占領下となってしまった。やがて連合軍がドイツ軍への反攻に転じると、ドイツ軍が拠点にしていたロッテルダムは、連合軍の爆撃機によって的とされた。両方の陣営から攻撃される結果となった街は、文字どおりの焼け野原だった。
ロッテルダムでは、戦禍の度合いが大き過ぎたため、修復可能と見受けられた一部をそうすること以外は、街を新たに建設する方向性を選んだ。その結果、今日の雰囲気があるのだが、そうした経過を辿っている故か、僅かに残された昔日の面影を伝える地区を大切にしている。その地区を散策して写真の眺めに出会った時、ロッテルダムが歩もうとする先には、影のように、繁栄も苦難も双方とも“街の歴史”が付いて来て、そして新しい世紀の扉が開かれて行くのだ、と感じた。街が深く留める記憶を少しだけ覗いたような気になる眺めである。


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