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Die Galerie

野望の痕
ブカレスト 『人民の館』
これを見た時に頭を過ぎったのは-無関係なのに引き合いにして恐縮だが…−「テレビで観た宝塚のセット…」という感想だった。ショートの髪を撫で付けて、ハッキリした目鼻立ちでスラリとした宝塚の俳優のような風貌の女性も多く見かけた後だったが、これは俳優が舞台で使うセットではなく、本当に石材で出来ている建物の内装なのだ…
ここは『人民の館』と名付けられた、元大統領がブカレストに遺した建物の内部である。英明な指導者と言われた時期もあったが、政権が長期化する中で暴君のようになって行った元大統領は、革命のような事態で銃殺され、亡骸はビデオに収録されて世界中に曝された…その彼が国中の資材を集めて築かせた宮殿がこれである。
丁度学生だった時分、上記の事件に触れ、地元にルーマニア人が来たことが切っ掛けとなり、多少歴史の勉強をして各地を訪ねたルーマニアだったが、離れる直前にここを訪ねた。本来はフランス語が専門という、学生のアルバイト風なガイドに案内してもらった。英語、フランス語、片言のルーマニア語で話しながら中を歩いた。何のために、何を考えて築いたのか判らないような代物だった。
この階段について、ガイドが言うには「何かにつけて口を挟んだ元大統領夫人が、“今一つね…”を連発し、何度も造り直した」という話しである…ポスト社会主義政権のルーマニアは、なかなか経済成長が出来ず、苦しい状態が続いていると聞くが、こうしたものを見ると、複雑な気持ちになる。
因みにこの建物は、現在は国会が管理しており、国際会議場となっているとのことだった。私が訪ねた時も、同時通訳に用いるブースが置かれた部屋も見受けられた。


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