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Die Galerie

河畔の古都
フランス南西部の古都アルビ
地元に居れば毎日眺めている宗谷海峡が、外国の地図には載っていないことが多々ある…テレビの“全国のお天気”でよくあるように型がデフォルメされていたり画面の端でよく判らないというような話しではない。“宗谷海峡”という記述が無いのだ。と言って名も無い海域ではない。名はある。“ラペル-ズ海峡”と称している。
“ラペルーズ”?“La Perouse”と記す。「これは何?」と調べてみると、フランス革命で断頭台の露と消えたルイ16世の勅命で世界周航を果たしたフランスの航海家の名であった。この人物の出身地が、港町ではなく、南西部の山間、河畔に拡がる旧い街アルビだったのだ…
眼前の“宗谷海峡”にその名を留める男が、どんな所からやって来たのか?一度“表敬訪問”しておきたかった…現代では彼の時代のような苦しく長い航海をする必要もない。欧州まで1日で飛んで、列車か何かで一寸訪ねてみれば良いのである。
思いつきで、若干不合理な道程で欧州を右往左往する中で、ドイツ南部のシュトゥットガルトから、スイス国内を抜け、ジュネーヴからの夜行列車でフランス南西部のトゥールーズへ入った。サッカーが好きな皆さんは、98年のワールドカップで日本チームがアルゼンチンと対戦した場所とご記憶であろう。そこから1時間強でこの街へ着く。簡単なものだ。
夜行列車を連発した強引な移動で少々消耗した身体を休める宿を駅前に確保して、冬の淡い日差しの中、アルビを歩いた。港でもないのに錨を象ったものが添えられた人物の立像が中心街の入り口に立っていた。それがラペル-ズだった…
この街は“西洋浮世絵”という趣の独特な絵を描いたロートレックの故郷としての方が、日本ではお馴染みだ。あの雰囲気が好きなので、彼の作品を納めたギャラリーにも珍しく-有名美術館などを、私はどちらかと言えば訪ねない…−足を運んだが、世界周航を果たしたラペルーズは、芸術家と同等かそれ以上の存在感をこの旧い街で示していたのだ…
それに愕きながら散策していると、河畔に拡がっている街の雰囲気を眺められる場所に行き当たった。ここに立ち、船団を率いて航海に出る遥か以前のラペルーズも、ここに立って遠い国々へ思いを馳せていたのだろうか、と飽きもせずに30分程ジタン-フランスの煙草-を吹かして佇んでいた…地図の片隅の9文字のアルファベットがもたらした時間だった…


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