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Die Galerie

止まった時間
ヴェネツィア
前夜にウィーンを発った列車は、霧が掛かった長い橋状の線路を通り、ゆっくりとヴェネツィアの駅に到着した。駅の中は欧州各地で見られる駅と大差は無い。起点・終点になる駅の行き止まり式ホームがあり、駅舎内部も何処にでもありそうな雰囲気である。
駅の建物を一歩踏み出すと、ヴェネツィアという独特な場所へ到着したことを思い知る。そこは桟橋のようになっていて、眼前は運河で、客を満載した水上バス-ボート-が乗り場で控えている。聞えるのは船が発する飛沫の音とボートのエンジン音である。
地図で見ると概ね渦巻状に拡がるヴェネツィアの市街だが、干潟の上に点々と地面を造って入り組んだ運河状になった地面と地面の間を無数の橋で結んだ市街で、更に狭い地面に密集した建物が陰影を紡ぎ出し、実に複雑で、歩いていて何度も方向感覚を失った。見よう見真似で覚えた要領を駆使し、辻々のバル-小さな立ち飲みで珈琲が飲める店-でエスプレッソを頼んで息をつきながら、水辺と言うより水上の街を歩いた。街の中には自動車やオートバイが走っていない。と言うより走れない…密集する様々な年代の建物が路地と運河を見下ろし、そこを人々が徒歩で行き交っている…私は何かのテーマパークにでも入ったような気がした。数百年前と変わらない様子なのかもしれない…
ヴェネツィアで“ヴェネツィアらしい”と感じたのは、写真のような小さく堅牢そうな橋である…


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